東京地方裁判所 昭和47年(行ウ)154号 判決 1978年5月11日
原告
一海知義
右訴訟代理人
佐伯静治
外一五名
被告
国
右代表者
瀬戸山三男
右指定代理人
佐藤次郎
外八名
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 原告
被告は、原告に対し、七、三二三円およびこれに対する昭和四六年一二月五日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は被告の負担とする。
仮執行宣言<後略>
理由
一第一次請求に対する判断
1 原告が給与法一九条の四第一項所定の勤勉手当支給の基準日である昭和四六年一二月一日現在六か月をこえて在職する文部省所属の職員として同月四日を支給日とする勤勉手当を受ける権利を有すること、給与支給義務者たる被告は、同年一二月四日原告に勤勉手当として六五、八七四円を支給したこと、原告が同年七月一五日争議行為(勤務時間内集会)参加による四八分間(午前八時三〇分から同九時一八分まで)欠勤したことは、当事者間に争いがない。
2(一) 被告支給にかかる勤勉手当六五、八七四円が次のようにして算出されたものであることは当事者間に争いがない。即ち、被告は、給与法(編注、一般職の職員の給与に関する法律)一五条により原告の右欠勤を理由に昭和四六年一〇月分給与から勤務時間一時間当りの給与額を減額し、これに伴ない、同年一二月四日支給の勤勉手当算出に当り、規則(編注、人事院規則九―四〇)一一条二項三号により右給与減額にかかる一時間を在職期間から除算し、期間率を規則一〇条別表第一により「五か月以上六か月未満」の勤務期間に対応する一〇〇分の九〇とし、また、規則一三条による成績率を一〇〇分の61.67と評定し、原告の俸給月額(一〇九、九〇〇円)および調整手当月額(八、七九二円)に右期間率および成績率を乗じて、勤勉手当額六五、八七四円を算出した。
(二) 当事者間に争いのない事実と<証拠>によれば、神戸大学教職員組合は、昭和四六年六月一八日中央代議員会を開催し、同年七月一五日に日本教職員組合の統一指令による大幅賃上げ要求、第二次定員削減案反対を目的とする早朝五九分間の要求集会を行うことを決定し、この決定に基づき、同年七月一五日勤務開始時刻である午前八時三〇分から同九時二九分までの勤務時間に五九分間くいこむ要求貫徹集会を実施したが、原告は神戸大学教職員組合中央執行委員長として、自己の勤務時間内である同日午前八時三〇分から同九時一八分までの四八分間前記のとおり右集会に参加し、その間神戸大学長の承認を受けることなく文部教官としての勤務をしなかつたこと、給与法一五条、運用方針第一五条関係の四、第一六条関係の二(3)により右四八分間は一時間として取扱われる結果勤務を欠いた期間が一時間とされ、これにより、同年の一〇月分給与から勤務一時間当りの給与額を減額されたことが認められる。
(三) 以上の事実によれば、原告の欠勤は、神戸大学長の承認によるものでないから、これを理由とする給与法一五条による給与減額に伴ない、規則一一条二項三号により在職期間から右減額期間(一時間)を除算し期間率を求めてなした被告の勤勉手当算出には、給与法令の解釈適用を誤つた点はない。
3 原告は、勤勉手当にかかる勤務期間の算出につき給与関係法規の解釈上少くとも一日未満の欠勤は、除算の対象とすべきでないと主張する。
しかし、給与法一五条、規則一一条二項三号の文理からはそのように解釈する余地はないのであり、給与法一五条により給与を減額された以上その減額期間を在職期間から除算することは規則一一条二項三号による必要的措置であつて、これによつて勤務期間が算出され、規則一〇条別表第一により期間率が一義的に定まるものであることは明らかであるが、なお原告の主張に即して判断することとする。
(一) 原告はその論拠として勤勉手当が生活的性格を有する旨主張するが、勤勉手当が法令に基づき支給されるものである以上当然のことながらその性格いかんは先ず現行実定法規の解釈にかかるものである。そして、解釈の結果得られた結論と生活実態が甚だしく遊離しているというのであれば、個々の問題ごとに別の観点からの運用の要否が改めて検討されなければならないのである。そこで勤勉手当に関する法令の規定を検討する。<証拠>によれば、勤勉手当制度の目的は、勤勉手当を勤務成績に応じて支給することにより、公務の能率の一層の向上に資することを目的として昭和二七年一二月から発足した制度であることが認められ、この制度発足により関係法令が整備されたが、本件当時における法令の規定をみると、給与法一九条の四(発足当時一九条の五)は、勤勉手当は基準日(六月一日、一二月一日、発足当時は一二月一日のみ)以前六か月(発足当時は一二か月)内の期間における職員の勤務成績に応じて支給される旨を明記するとともに、その支給基準の設定を人事院に委ね、人事院は、規則九条(発足当時は給実甲六三号「勤勉手当の基準について」)により、その支給基準としての支給割合を勤務期間による割合(期間率)に勤務成績による割合(成績率)を乗じて得た割合であると定めた。このように、勤勉手当の支給基準として期間率と成績率が定められたのは、勤務成績の評定がややもすれば陥りがちな評定者の主観に偏し公平を失する弊害を排除する見地から、客観的に把握しやすい勤務期間に対応したものとして職員の欠勤等の勤怠状況を示す期間率と所属長の判定による公務への貢献度等の勤務実績を示す成績率の二つの評定要素を具体的基準として定め、これにほぼ同等の重みをもたせることが合理的かつ妥当であるとされたものと解されるのである。以上述べたような勤勉手当制度発足の趣旨、給与法および規則中勤勉手当に関する骨格をなす規定(法条の位置、基準日、対象期間、人事院による基準設定方式、勤務期間の区分等は発足当時、本件当時(および現在)において異なるものもあるが、その内容の実質は同一である。)からみれば、勤勉手当が職員の勤務成績を基礎として定められる業績報償給としての基本的性格を有する給与であると認めることができる。
勤勉手当がかかる性格の給与であることは、これに関する諸規定と期末手当に関する諸規定を対比検討することにより一層明らかとなる。期末手当は、毎月きまつて支給される俸給等とは異なり、一年のうち予め定められた時期に、特定の日を基準として在職する職員に対し支給される特別の給与である点では勤勉手当と類似し、ただその支給時期が六月および一二月のほか三月も加えられているが、六月および一二月には勤勉手当と同時に支給されるのである。このように、両者は外観上、支給形式および支給時期において共通性を有しているのであるが、給与法一九条の三は期末手当につき在職期間の区分に応じて支給される給与である旨を明記するとともに、給与法二三条二項ないし五項は、公務上の負傷、疾病以外の事由による休職者に対する期末手当の支給割合につき、いずれも毎月支給され生計維持に供せられるいわゆる生活給としての性格を有すると認められる俸給、扶養手当、調整手当、住宅手当の定額給と同様の割合を定めており、これらの諸規定は、期末手当が基本的には生活給または生活補助給としての性格を有することを明らかにしているものということができる。これに対し、勤勉手当については、前記のとおり給与法一九条の四が勤務成績に応じて支給されるものであることを明記するとともに、公務上の負傷、疾病以外の事由による休職者に関しては給与法二三条二項ないし五項に相当する規定はなく、同条六項の適用を受ける結果他の法律に特別の定がない限りこれら休職者は勤勉手当の支給は受け得ないのである。このように、給与法において、勤勉手当は期末手当とは異なり生活給と認められる前記俸給等の給与とは別異な扱いを受けているのであつて、そのことは、勤勉手当の業績報償性を裏付けるものということができるのである。
次に両者における金額算出の際の在職期間からの除算を本件当時の規則により対比すると、期末手当については、規則五条により、①停職者、非常勤職員、未帰還職員、専従休職者としての在職期間が除算されるほか、②公務上の負傷、疾病のための休職者を除くその余の休職者に対しその休職期間の二分の一が除算されるにとどまり、他に除算事由に関する定めがないのに対し、勤勉手当については、規則一一条二項により、①停職者、非常勤職員、未帰還職員、専従休職者、としての在職期間、②公務上の負傷、疾病のための休職者を除くその余の休職者に対しその休職期間全部、③給与法一五条(不承認欠動)または人事院規則一七―二第六条第七項(許可を受けた短期専従期間)による給与減額期間、④公務に起因しない負傷、疾病により勤務をしなかつた期間から勤務を要しない日および休日を除いた日が三〇日を超える場合にはその勤務をしなかつた全期間、⑤全期間にわたり勤務をした日がない場合には以上の①ないし④にかかわらずその全期間がいずれも除算されることになる。両者を対比すると、期末手当については、除算事由が限定され、特に一般の休職者であつても期間の二分の一の除算にとどまつていることは、その生活給または生活補助給としての基本的性格をあらわしているということができるのに対し、勤勉手当については、除算事由も多く、特に勤怠評価の対象とするのは相当でないと認められる公務に起因する休職〔②)、三〇日以下の負傷、疾病による欠勤 ④)を除いては勤務を欠く期間を除算することとし、特に⑤により全期間を除算することをも予定していることからみても(この場合期間率に相当する額は零となる)、その業績報償給としての基本的性格をうかがうことができるのである(その後規則の改正により両手当につき他の公共的機関の業務に従事するための休職期間はいずれも除算されず、勤勉手当につき育児休業職員としての在職期間は除算され、人事院規則一七―二第六条第七項の減額期間は除算されないこととされたが、これら改正は両手当の性格に変更をもたらすものではない)。
このほか、給与法一九条の三は期末手当算定の基礎に俸給、調整手当のほか扶養手当をも含ましめることにより、期末手当が当該職員だけでなくその扶養家族の生計維持に供せられる趣旨のもとに支給することを明らかにしているのに対し、給与法一九条の四はこれを除外し職務遂行の対価性を有する俸給および調整手当を基礎として勤勉手当を算出すべきことを定めているにとどまるのであり、このことは勤勉手当の業績報償性を知る手掛りとなるのである。
勤勉手当を業績報償給と解する以上同一人であつても支給時期により支給額に変動があるのは当然予想されるのであるが、このように勤勉手当に定額性の保障がないことにより一般に職員およびその家族が生計維持に著しい支障を受けるというのであれば、関係法規の解釈運用上の特段の配慮を要することもあり得ようが、現に職員はその生計維持のため毎月定まつた俸給のほか、その職種、地位、家族状況、居住地域、住宅事情に応じて各種調整額、扶養手当、調整手当、住宅手当、通勤手当等諸給与の支給を受けるほか、前記のように毎月三月、六月、一二月に期末手当の支給を受けており、さらに人事院勧告による給与その他の勤務条件の改善が制度的に保障され、かつ毎年の勧告により、それが完全に満足すべきものかどうかの評価はさておき、逐次改善が実施されているのであるから、勤勉手当が生活給的性格をも強く帯有するものとして、少なくとも本件のような給与減額期間の除算につき、関係法規の解釈運用上特段の配慮を要する実態にあるとまでは認め難い。
原告は、勤勉手当が一時的な出資が増加する盆暮に支給されていることをもつて生活給的性格を有するものである旨主張するが、右出資がすべて生計維持に必要なものばかりであるとはいい難いうえ、その時期には同時に生活給または生活補助給としての性格を有する期末手当も支給されているのであるから、支給時期が盆暮に当つたからといつて実定法規が業績報償給としている勤勉手当の性格をそのようなものとして強調することは相当ではない。もちろん、職員が生活給である俸給等の定期定額給、期末手当等のほかに勤勉手当の支給を受ければ、これらと相合してその一部または全部を生活向上のための有益な支出または貯蓄にあてるという一般的現象をあえて否定するものではないが、そのことが直ちに勤勉手当の勤務期間算出につき本件のような給与減額期間の除算を不当とする主張を肯認することにつながるものでないことは、いうまでもないところである。また、原告は期間率と勤務期間が対応関係にないことをもつて勤勉手当の生活的性格を裏付けようとするが、右のような関係が勤勉手当の業績報償性を否定するものでないことは後に述べるとおりである。さらに、原告主張の成績率決定についても、国の各庁とも所属長が一定の基準に従つたランク付けに応じて勤務成績を評定しできるだけこれを公平に決定するよう制度化していることは顕著な事実であつて、これが全く形式的又は一率に決定されるよう運用されていると認むべき証拠はないのである。
(二) また、原告は規則一一条二項三号の除算期間を時間単位に解釈した場合、原告のように六か月間に一時間でも欠勤があり給与が減額されると完全な勤務をした職員として扱われず、この者に比べて期間率において一〇パーセントの減少となり、期間率の適用については一か月近い欠勤と同一に取り扱われることになるからかかる解釈は誤りであつて同条の解釈上少くとも一日未満の欠勤は除算すべきでない旨主張する。
原告の右主張は勤勉手当の基本的性格を生活給としてとらえることを前提としているのであるが、その点がしからざるものであることは既に述べたとおりである。そして、勤勉手当の基本的性格を勤怠評価に基づく業績報償として理解するならば無断欠勤・遅刻・早退の有無、多寡が勤怠状況の評価について重要な資料となることは事柄の性質上当然のことであり、この無断欠勤等を勤務期間の算定にあたり消極的に考慮することは合理的であるといえるし、また、これが規則一一条二項三号の趣旨と解される。このことからすれば、六か月間全く勤務を欠いた期間をもたない職員、即ち全期間を無断欠勤等をすることなく皆勤した職員とたとえ一時間でも無断欠勤等のため給与を減額された職員とを勤務期間の取扱において区別し、無断欠勤等のあつた職員を下位に評価し期間率の適用について差異をもうけることにはなお合理性があるというべきである。ところで勤勉手当は、原則として一か月単位で支給される俸給のように正規の勤務時間に対する労働に対して支払われるものではなく、支給対象期間における勤務状況を全体的に把握して業績報償的見地から支給するものであり、その期間も六か月という長期間にわたるから、勤務期間の区分の仕方、この区分と支給割合との対応関係も、欠勤による給与額の減額における欠勤時間と減額率との間におけるような厳格な機械的比例関係を要求するものではなく、勤勉手当の業績報償的性格を没却したり、その区分割や支給割合との対応関係が著しく不合理でない限り、その区分の中で勤務期間に差があつても、支給割合を同一にすることは許されるものと解される。しかして、この勤務期間について、人事院は、本件当時の規則一〇条別表第一において、勤務期間が六か月の場合には、完全なる勤務をしたものとして期間率を一〇〇分の一〇〇とし、勤務期間を全く欠く場合には期間率を零として勤勉手当を支給しないものとし、これを両端としてその中間を一か月間隔で区分し、八段階に区分しているが、これに対応する期間率は勤務期間の一区分ごとに一〇〇分の一〇ずつの割合による逓減の方法をとつているのであつて、業績報償的見地からかかる区分と支給割合との対応関係を不合理とすべき事由を見出しがたい。このように勤務期間の区分につき、欠勤のない完全な勤務をした場合を最上位の区分とし、それ以外の勤務期間を一か月単位で区分してこれに対応する期間率を定める場合、一つの区分と他の区分の切れ目の前後においては勤務期間の差異は僅少であるのに期間率の差は画然としてあらわれることはこのような区分割を前提とする限りやむを得ないところである。(因に、原告主張のように一日に満たない欠勤を除算すべきでないとの解釈をとつたとしても、一日の勤務時間を八時間とした場合七時間欠勤し一時間勤務したにすぎない者は除算されず期間率一〇〇分の一〇〇の適用を受け、当日全部欠勤した者は一日分として除算され期間率一〇〇分の九〇の適用を受けることになるが、僅か一時間勤務に従事したか否かの差によつて期間率に一〇パーセントの差が生ずることになるのであり、かかる切れ目的現象は避け難いのである。)。本件で原告は一時間の無断欠勤により全期間を完全な勤務をした職員として扱われず、期間率において一〇パーセントの減少をみたのであるが、以上の諸点を考慮すれば、特に全期間を皆勤した者との対比において勤務を欠いた一時間について期間率が一〇パーセントの減少となつたとしてもいまだ勤務期間と支給割合たる期間率との対応が著しく不合理であり、給与法一九条の四が業績報償的給与たる勤勉手当の支給割合の決定基準を人事院規則に委任した趣旨を逸脱しているとまでは認め難い。
なお、勤勉手当の勤務期間に関し除算すべき各場合を規定した規則一一条二項について、三号を除くその余の各号は日以上を単位として算定されるものと認められるが、これは規定の対象として除算すべき期間が一号にいう在職期間、二号にいう休職期間、四号にいう負傷または疾病により勤務しなかつた日が三〇日をこえる場合の勤務しなかつた期間のように社会通念上日単位でしか算定しえない性質のものであるためであり、同条二項三号の期間が時間単位で算定すべきことを否定するものでないと解される。また、昭和三八年給実甲二二〇号「期末手当および勤勉手当の支給について(通知)」の八項および昭和四三年職職一〇三六号「人事院規則一五―六(休暇)の運用について(通知)」の第三項関係は単に時間を日に、日を月に換算する方法を説明した通達であるにすぎず、勤勉手当にかかる勤務期間の除算が時間単位でなされることを否定する論拠とはなし難い。さらに、当事者間に争いのない事実ならびに<証拠>を総合すると、国家公務員の勤勉手当制度とほぼ同様の勤勉手当制度をもつ都道府県では、条例または規則で一日未満の欠勤を期間率の基礎となる勤務期間から除算しない旨明文化したりあるいは運用において右と同様の取扱いをしているものがあることが認められるが、かかる事実により規則一一条二項三号の解釈が左右されるものでなく、ことは立法政策の問題に帰着するに過ぎない。
4 さらに、原告は争議行為による不就労は本来勤怠実績の評価の対象となしえないものであるから、この不就労をとらえて期間率を減じたことは、給与法一九条の四、規則一一条二項三号の解釈を誤つたものであり、仮にそうでないとしても、本件勤勉手当減額措置は争議行為に対する過酷な制裁措置をとることを目的としたものである旨主張するので、この点につき検討する。
規則一一条二項三号は、給与法一五条による給与減額の事実があれば必ず給与を減額された期間を勤勉手当の勤務期間から除算する旨定めているが、これは、無断欠勤による給与額の減額という客観的事実があればその事由の如何を問わず、その事実のみを勤怠状況の評価における消極的評価要素とみて、その期間を一律に除算し、これを期間率に反映させる趣旨と解される。従つて、規則一一条二項三号の解釈について、給与減額の理由が争議行為による欠勤であつたことは斟酌されないのであるが、仮に原告主張のように争議行為による不就労を通常時の欠勤と別異に取り扱うべきとの立場に立つたとしても、民間企業における従業員と異なり、国家公務員については、国家公務員法九八条二項により争議行為をなすことが禁止されているから(右規定が合憲であることについては最高裁判所昭和四八年四月二五日大法廷判決最高裁判所刑事判例集二七巻四号五四七頁参照)、争議行為参加による欠勤が業績報償的給与たる勤勉手当の勤務期間の算定につき消極的に評価されることは是認されるものというべきである。
このように被告のなした本件勤勉手当算出につき給与関係法規の解釈に誤りが認められない以上争議行為参加に対する制裁措置を考える余地はないから、原告の主張はいずれも失当である。
5 以上のとおりであるから、原告の第一次請求は理由なきに帰する。
二第二次請求に対する判断
第二次請求における原告の主張の要旨は、勤勉手当における期間率の決定について所属長に裁量権があることを前提としたうえ、原告に対する勤勉手当の算出の基礎となつた期間率の決定について所属長たる神戸大学長に裁量権を逸脱した違法があるとして、国家賠償法一条により減額分相当の損害賠償請求をするというものであるが、既に説明したとおり、勤勉手当額の算出の基礎となる期間率は、規則一〇条において基準日における勤務期間に応じて具体的に定められており、各職員の客観的な勤務期間に応じて一義的に定められるものであるから、所属長に裁量の余地はないのである。従つて、期間率について、たとえ所属長の決定行為があるとしても一種の確認行為的なものにとどまり所属長が裁量権を行使するものではないから、原告の主張はその前提を欠き、その余の判断をするまでもなく失当である。よつて、原告の第二請求も理由なきに帰する。
三よつて、原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(松野嘉貞 吉本徹也 牧弘二)